またしても久しぶりの更新になりました。

やや時機を失した感がある話題ですが、ぜひとも一言。

今年7月9日から始まったフジテレビ系列の月曜21時からのドラマ(いわゆる月9)
「リッチマン、プアウーマン」は、小栗旬・石原さとみ・井浦新らが出演しているが、初回を見て、我が耳を疑った。

主役の一人のベンチャーIT企業の社長が、共通番号制の導入を見越して、共通番号を活用し、さらにそれを上回るような、戸籍をネット上で管理するシステムの構築を計画しよう、という。そのために、東大4年の就活生を使って、総務官僚に折衝させる、というのが、ドラマの下敷きになっていたからだ。

しかも東大就活生には、

「住基ネットの導入当時は国民のあいだに反対運動が起きたが、今は当時と違って、もはや番号制に嫌悪感は国民のあいだに見られない」

「番号制が導入されれば、消えた年金問題は容易に解消されるだろうし、そもそも起きなかった」

など、現実と大きく乖離、というより、全く合致しないことまで言わせていた。
撮影が総務省の敷地内で行われているところからも、共通番号制を管轄する総務省の全面協力がうかがえる。

共通番号制の問題は、小社刊『共通番号制なんていらない!』で詳しく論じられているが、情報流出の危険性やなりすまし犯罪の爆発的な増加、導入の費用対効果など多岐にわたる。

ドラマの話だからといって侮ることなかれ。
国家によるイメージ戦略=洗脳に加担するにもほどがある。
人気俳優をつかった一見爽やかな青春恋愛ドラマの裏に、国家権力を肥大化させようという政治性が潜んでいる。


蛇足:
23日放送の第3回では、ベンチャーIT企業はほぼ非正規の社員で占められており、その契約は3ヶ月という超細切れであることが常態化。
そうした待遇について、経営陣は「フェア」というではないか。

民主党政権の国家戦略会議フロンティア分科会が7月初め、「有期雇用を雇用の基本とする」という報告書を提出していたと、「しんぶん赤旗」が報じている。

「非正規社員は雇用の調整弁」とは、どこかで聞いたセリフで、それに対してかつて組合活動を行って闘争した。
雇用の基本は「無期限=正規」であり、自己責任や経営(経済)合理性という名のもとで、圧倒的な階級格差に目をつぶらされ、貧困を押しつけられていることに対して、そろそろ自覚的にならなくてはならない。

(写真は7月22日に上智大学で行われたシンポジウム「共通番号制の全てを知ろう!」で発言する、『共通番号制なんていらない!』の著者のひとり白石孝さんです)