12月16日(日)、特集上映「脚本家・田村孟」(川崎市市民ミュージアム)で、
荒井晴彦さん・井土紀州さん・土田環さんのトークショーが行われました。

この日は、先にお知らせしたとおり、
田村孟唯一の監督作品『悪人志願』と、
武田泰淳原作・大島渚監督『白昼の通り魔』の上映で、
その2本の合間のトークでした。

トークでは、まず、この2本の映画をはじめとして、
田村孟脚本の映画の背景には、敗戦後に表層だけが一変する
(しかし「ムラ」という本質は何ら変わらない)日本社会のありようや、
60年安保闘争(とその総括)への批判的言及があることなどが話題となりました。

さらに、土田さんからは、脚本家・映画監督の荒井さん・井土さんに、
「わたし」の視点で描かれた武田泰淳の一人称小説『白昼の通り魔』を、
いかに多人称に変換して映画脚本として成立させるのかという、
映画の人称性について提起があり、白熱した議論が展開。
井土さんからは、ご自身が監督した、
佐藤正午原作の一人称小説『彼女について知ることのすべて』を
そのまま一人称で撮った映画との対比が語られました。

最後の質疑応答では、客席から
「『悪人志願』は久しぶりに不愉快な映画を観た」という意見。
それに対して、荒井さんや、客席にいらした足立正生さんから、
「松竹大船調」といわれる作風に対するアンチテーゼとして、
安易なカタルシスや共感、感動などを拒絶すると同時に、
社会批判を含み込みながら、映画本来の映像表現としての可能性を追究することを
主眼としていたと考えられること、
そもそもそうした感動や共感とは、映画にとって、ひいては人にとって何を意味し、
どのような存在であるのかを考える、いい契機ではないかという提起がありました。


特集上映「脚本家・田村孟」の今後の予定は、
年内は22日(土)からの3連休の上映でひとまず中断、
年明けは1月12日(土)から再開です。
お見逃しなく!

特集上映「脚本家・田村孟」12月のラインナップ
↑↓リンクをクリックすると別ウィンドウが立ち上がります。
1月のラインナップはこちら。

●12月22日(土)
○12:30~『狼の王子』
日活/1963年/白黒/35mm/102分
企画:水の江滝子/原作:石原慎太郎/脚色:田村孟、 森川英太郎/監督:舛田利雄
出演:高橋英樹、浅丘ルリ子、石山健二郎、加藤嘉、川地民夫

○15:00~『未成年 続・キューポラのある街』
日活/1965年/白黒/35mm/98分
企画:大塚和/原作:早船ちよ/脚色:田村孟/監督:野村孝
出演:吉永小百合、浜田光夫、宮口精二、北林谷栄、松原マモル

●12月23日(日)
○12:30~『花嫁は十五才』
日活/1964年/白黒/35mm/79分
企画:坂上静翁/原作:藤原審爾/脚本+監督:江崎実生/脚色:田村孟、森川英太郎
出演:山内賢、和泉雅子、東野英治郎、奈良岡朋子、高原駿雄

○15:00~『日本春歌考』
創造社/1967年/カラー/35mm/103分
製作:中島正幸/脚本+監督:大島渚/脚本:田村孟、佐々木守、田島敏男
出演:荒木一郎、岩淵孝次、伊丹一三、小山明子、吉田日出子

●12月24日(月・祝)
○12:30~『無理心中日本の夏』
創造社/1967年/35mm/98分
製作:中島正幸/脚本+監督:大島渚/脚本:田村孟、佐々木守
出演:桜井啓子、佐藤慶、戸浦六宏、殿山泰司、田村正和

○15:00~『炎と女』
現代映画社/1967年/白黒/35mm/101分
製作:織田明/脚本+監督:吉田喜重/脚本:田村孟、山田正弘
出演:岡田茉莉子、木村功、小川出、日下武史、小川真由美