【著者】松本圭二
【訳者】大野南淀

【判型】四六判変形/並製/表紙小口折(がんだれ)/天・小口アンカット
【頁数】240頁
【定価】本体3,400円+税
【コード】ISBN978-4-906738-46-5

映画×短編小説=詩

「私は映画『ブレードランナー』に出てくるレプリカントの生き残りの一人で、
謎の組織から『詩を書け』と命令を受けていた。
しかし私が書きたいのは詩ではなく短編小説なのだ。
もう時間は残されていない」

自らの病、そして友人の他界など大きな決断を迫られるなかで紡いだ23篇。
英訳と合本したバイリンガル詩集。

 

 

【「老犬」より】

この夏はうんざりだった
おまえはどうだい?
人間はみんな口をなくして
ボウフラのようにふらふら漂っている
秋は本当に来るのか
おまえは秋まで生きていられるかい?
停滞する時間ってあるんだな
死の隣に
ヒトゴミのなかに
想像力の敗北が横たわっているようだ

 

 

【「ある映像作家の死」より】

映像作家は何度もラスト・カットを生きてきた
詩人もおなじ
死が終わり、死後が始まるという大文字の、宗教的な物語も
もう、いいかげん、飽きた
ニンゲンに救いがあるなんて思わないほうがいい
あるのは、絶望的な句点のみ
その「。」のなかには
小さなため息があるだけ
死と等価の
だから

 

主な取り扱い書店一覧

 

【目次】

サタン・タンゴ
老犬
恋人たち
コーネリアス
ペカル
門脇さん
皆殺し怪獣ミナゴン
ドロリ
プラヴダ
ウィキペディアより
エルモ
夏、キッズ・パークにて
ジムニー
文学賞の世界
或るアーキヴィストの肖像
詩人たち
ふつうの詩
コロナ時代の愛
アシタカを探しに
ノン・アルコール詩篇
ジュライ・ラプソディー
西瓜を二つぶらさげて
ある映像作家の死

 

【略歴】

松本圭二(まつもと・けいじ)
詩人。フィルム・アーキヴィスト。
1965年生まれ。三重県四日市市出身。
2006年、『アストロノート』(「重力」編集会議)で第14回萩原朔太郎賞受賞。
他の著作に、詩集『ロング・リリイフ』(七月堂、1992年)、
『詩集工都』(七月堂、2000年)、『詩篇アマータイム』(思潮社、2000年)、
「松本圭二セレクション」全9巻(航思社、2017-18年)、『松本悲歌』(航思社、2019年)。
フィルム・アーキヴィストとしては過去20年以上アジア映画の保存に従事、
また木村栄文や中山太郎といった知られざるローカル映像作家を発掘。

大野南淀(おおの・なんじょう)
詩人。
1981年、大津市生まれ。ミシシッピ大学大学院博士課程中退。
詩集『アラバマ太平記』(思潮社、2020年)、『過剰』(共著、七月堂、2016年)。