【著者】菅 孝行
【判型】四六判、上製、スピン有
【頁数】304頁
【定価】本体2,700円+税
【コード】ISBN978-4-906738-45-8

【帯 表1・表2・目次扉・中扉写真】鈴木忠志 構成・演出『世界の果てからこんにちは』
【帯 表3・表4】新利賀山房
【表紙写真】利賀芸術公園全景

 

【ためし読み】

 

 

「世界水準」の演劇の誕生

「世界水準」に達している日本の演出家は、鈴木忠志だけだ――
早稲田大学の学生劇団自由舞台から、
早稲田小劇場(その後SCOT)の結成、
水戸芸術館や静岡県舞台芸術センターの芸術総監督就任、
日本初の世界演劇祭「利賀フェスティバル」や
第9回シアター・オリンピックスの開催へ。
同世代の評論家・劇作家として併走してきた著者が、
鈴木忠志のこれまでの活動と、
東西の古典劇や歌謡曲を再構成した独創的な作品を、
時代背景とともに精緻に分析、
「世界認識の媒介」あるいは
「世界批評」「世界変革」としてのありようを剔出する。

 

 

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【著者より】

2021年は早稲田小劇場結成から56年目に当たる。
かつて鈴木とこの劇団の耳目をそばだたしめた活動といえば、
1972年、『劇的なるものをめぐってⅡ』のテアトル・デ・ナシオン(パリ)での上演、
74年、岩波ホールの芸術監督に就任した鈴木忠志演出の『トロイアの女』の上演、
76年の利賀(富山県)への拠点の移動、
82年からの利賀フェスティバルの開催などだろう。
その後、鈴木は90年に水戸芸術館(ACM)の創設(…)、
さらに静岡県舞台芸術センター(SPAC)で、
芸術総監督制の本格的なモデルの確立に力を注いだ。
2007年SPAC芸術総監督の退任後は、
創造拠点としての利賀芸術公園のさらなる拡充に力を注ぎ、(…)
2019年に開催した第9回シアター・オリンピックスは、
鈴木の劇団SCOTが築き上げた力の総量を、拠点の劇場から世界に発信する機会ともなった。

鈴木忠志の軌跡は、鈴木忠志が「演劇人」の枠には収まらない、
演劇を媒介に想像力の圏域で世界と闘う人間であることを示している。
その闘いは個人のものではなく、集団のものである。
以下の7章で、闘いがどのように始まり、
どのような経過を辿って今日に至ったのかを記してゆきたい。

――第Ⅰ章より

 

【目次】

第Ⅰ章 2019年・利賀
 1 演出家鈴木忠志をどう評価するか
 2 第九回シアター・オリンピックス
 3 SCOT 参加作品と劇団

第Ⅱ章 その初心と第一の飛躍(1960-1968)
 1 戦後への隔靴搔痒――新劇への違和
 2 学生演劇から六〇年代演劇へ
 3 早稲田小劇場の誕生――鈴木忠志・別役実・小野碩

第Ⅲ章 〈からだのことば〉が生きる場所へ(1969‐1973)
 1 『劇的なるものをめぐってⅡ』と鈴木忠志
 2 女優白石加代子の誕生――小野碩との別れ
 3 「演技論」の圏域をこえて

第Ⅳ章 根拠地を創る――60年代からの離陸(1974‐1983)
 1 異種格闘技の達成したもの
 2 利賀への〈長征〉
 3 新たな展開へ

第Ⅴ章 60年代演劇を遠く離れて(1984-1996)
 1 芸術総監督への助走
 2 世界批評の演劇
 3 SPACへ――活動のウィングの拡大

第Ⅵ章 SPAC芸術総監督の時代(1997-2007)
 1 SPACでの歌謡劇
 2 「日本人」との対峙
 3 西欧古典との対決

第Ⅶ章 再び利賀へ(2007‐2014)
 1 SPAC 最後の仕上げ
 2 利賀への回帰――世界各地からの招聘
 3 〈縮む日本〉との対峙

第Ⅷ章 「ニッポンジン」と向き合う(2014-)
 1 デタラメの効用
 2 歌謡劇の変容
 3 なぜ鈴木忠志を論じるのか

あとがき
鈴木忠志/SCOT関連年表

 

【略歴】

菅 孝行(かん・たかゆき)評論家、劇作家。1939年生まれ。
舞台芸術財団演劇人会議評議員、
ルネサンス研究所運営委員、河合文化教育研究所研究員。
著書に『戦う演劇人』(而立書房、2007年)、
『天皇制と闘うとはどういうことか』(航思社、2019年)、
『三島由紀夫と天皇』(平凡社新書、2018年)、
編著に『佐野碩 人と思想』(藤原書店、2015年)など。