『横議横行論』

【著者】津村 喬
【解説】酒井隆史
【シリーズ】革命のアルケオロジー 5

【判型】四六判、上製、スピン有
【頁数】344頁
【定価】本体3,400円+税
【コード】ISBN978-4-906738-16-8
【カバー・帯写真】中平卓馬(2002年、『原点復帰—横浜』より)

「瞬間の前衛」たちによる横断結合を!

 

 

抑圧的な権力、支配システムのもとで人々はいかに結集し、蜂起するのか。
全共闘、明治維新、おかげまいり、横巾の乱、文化大革命、ロシア革命、ナチズムなど
古今東西の事象と資料を渉猟し、
群衆、都市文化、組織、情報、戦争、身体、所作/作風などあらゆる側面から考証、
「名もなき人々による革命」の論理を極限まで追究する。

70-80年代に発表されたながら単行本未収録だった主要な論考に、
書き下ろしを加えた津村革命論の決定版アンソロジー。

 

【著者より】

猪俣津南雄『横断左翼論と日本人民戦線』の私が書いた序文にはこうある。

「この(横断左翼の)理論は当時の運動に多大な害毒を流していた
分裂主義および解党主義に対するきびしい実践的批判の性格をもっていたがゆえに、
当時の全運動の根本的弱点を照射する鏡となるとともに、
進行するファシズム下に最後の抵抗としてくりひろげられた統一運動を
深部から意味づけるひとつの重要な理論たりえたのであった。
惜しむらくは、時すでにおそく、
日本人民戦線は萌芽のうちに暴圧をこうむって潰滅し、
猪俣も獄に病んで志半ばにして斃れ去った」

いま横議横行から横断左翼までを振り返ってみる理由というのは、
またしても右翼的反動の時代を迎えつつある中で、
タテ社会ではないヨコの抵抗組織、
そこからくる新しいヨコ社会のありかたを展望してみようという思いからなのである。

――「横議横行論(続)」より

 

【解説より】

現代日本でも、ここしばらくのあいだ、はっきりと「一九六八年」を否認し、
左派勢力総体を、人道主義、リベラリズム、人権、ナショナリズムへの回帰のほうへと主導している知的動きの先頭に、
社会学者が加担していることをおもえば、その言説政治の動きも世界的に同時的な動きとして理解できるはずであり、
わたしたちの課題もおのずと浮上してくるだろう。
とりわけ慢心のうちにあるひとは、最低の鞍部でもってなにかを乗り越えたつもりになることを好むものである。
この鞍部を規格化し、だれもが利用できるように差しだすのが、
知識人と広告業界、メディアの複合体によって、
一九七〇年代からそれ以降をとおして定着をみせた統治技法のひとつであるといえる。
だれもが、メディアを通じて規格化され、戯画化された「最低の鞍部」を差しだされ、
簡単に乗り越えることができるとおもい込まされている。(…)
かくしてだれもが過去を乗り越え、すべての欠点を克服したはてに、歴史の絶頂に位置することになる。
現代は、このような自己愛と高慢の情動で充填された日本語で満ちあふれている。

本書がなぜいま読まれなければならないか?
そのような日本語空間――津村喬たちが「国=語」と名づけた――の外に脱出し、
わたしたちのスタイルをあらためて獲得するためにほかならない。

――酒井隆史「一九六八年 持続と転形」より

 

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【目次】

Ⅰ 横議横行論

Ⅱ 群衆は増殖する

Ⅲ レーニンと組織戦略

Ⅳ ゲッベルスの大衆操作

Ⅴ 仮面と変身――サブカルチュアの政治経済学のためのノート

Ⅵ 異化する身体の経験――全共闘世代について

Ⅶ 差別について何を語りうるか

Ⅷ 横議横行論(続)

あとがき

解説 一九六八年 持続と転形(酒井隆史)

 

【略歴】

津村 喬(つむら・たかし) 評論家、気功家。
1948年生まれ。70年、早稲田大学第一文学部中退。在学中より評論活動を開始。
現在、NPO法人気功文化研究所代表、NPO法人日本健身気功協会理事長。

主な著書に『戦略とスタイル 増補改訂新版』(航思社)、
『津村喬 精選評論集――《1968》年以後』(絓秀実編、論創社)、
『われらの内なる差別』(三一新書)、『魂にふれる革命』(ライン出版)、
『革命への権利』『歴史の奪還』(せりか書房)、
『メディアの政治』(晶文社、日本図書センター)、『全共闘:持続と転形』(編著、五月社)、
『しなやかな心とからだ』(新泉社)、『食と文化の革命』(社会評論社)、
『歌いながらの革命』(JICC出版局)、『神戸難民日誌』(岩波ブックレット)、
『LEFT ALONE』(共著、明石書店)、『健身気功入門』(春秋社)ほか多数。