【著者】菅 孝行
【判型】四六判、上製、スピン有
【頁数】380頁
【定価】本体3,500円+税
【コード】ISBN978-4-906738-48-9
非党派左翼の闘いのあゆみ
60年安保以後のさまざまな社会運動――全共闘、協商懇、
連合赤軍公判対策委員会、反天皇制、日の丸・君が代など――と、
表現における革新運動――東映争議、清順問題共闘会議、
俳優座造反、〈持たざる者の演劇〉、ATGなど――の
両軸で闘いながら、物語と批評をつむいできた非党派左翼は、
いかに時代と対峙してきたか。
【著者より】
自分史を戦後史に重ねて語る、というのが本書のテーマである。
演劇・映画・思想・政治社会運動・予備校など、
私はいろいろな世界に触れて生きた。
「二足の草鞋」を嫌う「日本文化」の中では、
何かにつけて白い目で見られがちだった。
その結果、というわけでもないが、
ついに何者にもなれなかった。
貶めていえばディレッタントだが、
格好良くいえば、祝祭的昂揚をファシリテートし、
祝祭が鎮まると、そんな奴がいたのかどうか周囲が忘れてしまう座敷童子である。
多少なりとも座敷童子のように生きられたら、
その限りで本書の題名通り「後悔せず」に近づけたといえる。
――第Ⅰ章より
【目次】
第Ⅰ章 血族を離れ、歴史に帰る――軍人の子の〈逃走〉
1 血族
2 「民主化時代」の学習院
3 大学入学――〈父の圏域〉との緊張
第Ⅱ章 1960年前後――「遅れてきた青年」の駆け足
1 ノンポリ演劇青年
2 遅ればせの学生運動と劇研
3 残留か就職か
第Ⅲ章 異界との遭遇――一粒の麦の落ち行く先
1 東映京都撮影所への配属
2 演出助手の視野で見た撮影所
3 組合専従――ストライキ
第Ⅳ章 東へ還る――「フリーランス」の〈地獄〉で
1 夢破れる
2 忸怩たる撤退
3 時代の〈蚊帳の外〉から
第Ⅴ章 1968年 〈想像力革命〉の渦中で
1 60年代――〈世界〉と〈自分〉のはざま
2 芸術の変動と様々な歴史修正主義
3 新劇の地滑りと自作の上演
第Ⅵ章 交錯する騒乱のなかで――〈ものを書く〉ことのほうへ
1 68年の騒乱
2 時代の掌の上で
3 党派と無党派
第Ⅶ章 〈持たざる者の演劇〉のほうへ
――俳優座〈造反〉のあとに
1 冷えてゆく社会
2 『はんらん狂騒曲』の上演
3 「不連続線」結成と同人誌『反白書』
第Ⅷ章 振り向けばだんだんひとり
――ポスト・フェストゥムを生き延びる
1 『映画批評』・日本赤軍・連合赤軍事件
2 祭りの後の祭りへ
3 編集者との出会いの諸相
第Ⅸ章 糧道・文筆・ATG
1 映像産業の渡り職人
2 文筆業の世界への〈参入〉
3 映画『北村透谷』とその周縁
第Ⅹ章 負の画期 1980年代
1 反核運動・「協商懇」
2 PARCで出会ったことなど
第Ⅺ章 ふたつの〈天皇代替わり〉――平癒祈願の戒厳令と護憲天皇生前葬
1 戦後世界と象徴天皇
2 象徴天皇制――〈鎧〉の露顕
3 代替わり戒厳体制に抗す
4 30年後の視野から
第Ⅻ章 予備校という〈梁山泊〉――競争の場の祝祭
1 予備校に駆け込む
2 擬似的祝祭空間
3 縮む市場・変わる雲行き
第XIII章 「反革命」の勝利――再び演劇に触れ直す
1 ベルリンの壁崩壊以後
2 少しだけ再び演劇のほうへ
3 再び〈ものを書く〉というトポスへ
第XIV章 3.11の切断とその後
1 『変革のアソシエ』、ルネサンス研究所
2 物書き、再びの……
3 演劇、映画、「大学改革」との確執
【略歴】
菅 孝行(かん・たかゆき)
評論家、劇作家。1939年生まれ。
舞台芸術財団演劇人会議評議員、ルネサンス研究所運営委員。
著書に『演劇で〈世界〉を変える――鈴木忠志論』(航思社、2021年)、『天皇制と闘うとはどういうことか』(同、2019年)、『三島由紀夫と天皇』(平凡社新書、2018年)、『戦後演劇 新劇はのりこえられたか』(朝日新聞社、1982年)、戯曲集『いえろうあんちごうね』(アディン書房、1978年)、『ヴァカンス/ブルースをうたえ』(三一書房、1969年)、編著に『佐野碩 人と思想』(藤原書店、2015年)など。