『松本悲歌』

【著者】松本圭二

【判型】A5判、並製(広開本)
【頁数】168頁
【定価】本体2,800円+税
【コード】ISBN978-4-906738-41-0

※電子版は近日配信予定、特装版は現在鋭意制作中(2019年11月28日)

 

鬼火のような抒情

 

 

 

老いや死、破滅や終焉など、
その予兆を感じさせつつ
なだれゆく散文的崩壊の危機に抗いながら
その瀬戸際で紡ぎだすポリフォニックな抒情。
萩原朔太郎賞受賞以後の到達点。

 

 

【本文から】


林檎が落ちるように、時間もまた落ちて行く。落ち続ける。人間は誰でも本当はそのことに気付いている。だからこそ「円形の文字盤」や「ひたすら進み続ける数字だけの何か」を発明した。


ペドロ・コスタのスクラップブックに感動するのは必死で時間を塞き止めようとしているからだ。彫像も絵画も、音楽も、書物も映画も、時間を塞き止めるために仮構された閉域だった。その閉域を壊すのは簡単だ。すごく簡単。でもそれを修復するのはほとんど不可能である。「半開き」になった閉域は壊れていくしかない。問題はどう止血するかだ。違うか? ああ、ああ、ああと狼狽えるばかりの時間に、止めどなく血は失われていくだろう。

 

 

【略歴】

松本圭二(まつもと・けいじ)
詩人。フィルム・アーキヴィスト。
1965年生まれ。三重県四日市市出身。
2006年、『アストロノート』(「重力」編集会議)で第14回萩原朔太郎賞受賞。
他の著作に、詩集『ロング・リリイフ』(七月堂、1992年)、
『詩集工都』(七月堂、2000年)、『詩篇アマータイム』(思潮社、2000年)、
「松本圭二セレクション」全9巻(航思社、2017-18年/前記詩集のほか、未刊行小説集、映画批評・詩論集で構成)。
フィルム・アーキヴィストとしては過去20年以上アジア映画の保存に従事、
また木村栄文や中山太郎といった知られざるローカル映像作家を発掘。

 

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