『敗北と憶想』

【著者】長原 豊

【判型】四六判、上製、スピン有
【頁数】424頁
【定価】本体4,200円+税
【コード】ISBN978-4-906738-39-7
【カバー写真】relaxmax

 

 

日本のモダニティを剔抉する

 

 

吉本隆明、小林秀雄、花田清輝、
埴谷雄高、丸山眞男、萩原朔太郎、谷川雁、黒田喜夫……
過去を想起‐憶想し、受け取り直すこと。
その反復で生産される微細な差異を感受‐甘受すること。
近代日本における主体と歴史、そして資本主義のありようを踏査し、
〈瑕疵存在の史的唯物論〉を未来に向けて構築するために。

 

 

【著者より】

ひとは、いつでも、過去の土産-滞貨に衝き動かされ、
現在(の時)においてそれを腑に落とし(きれずに)、
未来に、あるいはベンヤミンに言わせれば過去とともに蒐集された「異郷-遠方」に、
その想いを馳せながら生き延びるために過去を現在に措いて想起-憶想し、
倦怠の果てに――まるで「四月テーゼ」のように――跳躍することで、
現在という時に有りながらも過去と未来に身を引き裂かれることを、
つまりひとは歴史に居残りを命じられているのだ。

――「敗北の憶想、あるいは彗星とラス前」より

 

 

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【目次】

はじめに

 敗北の憶想、あるいは彗星とラス前

Ⅰ 歴史叙述の作法

第1章 死者が生者を捕らえる――ふたたびマルクスとともに
第2章 非精確な歴史叙述――だがドゥルーズ的小林秀雄が

Ⅱ 気分

第3章 気分はいつも、ちぇっ!――埴谷雄高の「不快」
第4章 風に向かって唾を吐くな!――であればこそ、かのニーチェが

Ⅲ 「私」の反復

第5章 予感する記憶――三島由紀夫の「不快」とその編集
第6章 不自由な「私」――戦後近代(文学)とEcce Ego
 補論 余白と置字――荻原朔太郎の「球体」

Ⅳ 反復と跳躍

第7章 睥睨する〈ラプラスの魔〉と跳躍――小林秀雄が切線する
第8章 契がもたらす疚しさに拮抗する――吉本隆明の「切断」
 補論 肉月の詞――詩人 吉本隆明

Ⅴ 確信‐期待という「主体」

第9章 こうして世界は複数になる――谷川雁と丸山眞男の絶対的疎隔
第10章 反時代的「確信」――藤田省三の「レーニン」
 補論 雑業の遺恨――黒田喜夫と「ぼく」

 

【略歴】

長原 豊(ながはら・ゆたか)
法政大学経済学部教員。1952年生まれ。
著書に『天皇制国家と農民』(日本経済評論社)、『われら瑕疵あるものたち』(青土社)、
『ヤサグレたちの街頭』(航思社)、『政治経済学の政治哲学的復権』(編著、法政大学出版局)、
『債務共和国の終焉』(共著、河出書房新社)、
訳書にアルベルト・トスカーノ『コミュニズムの争異』、スラヴォイ・ジジェク『2011 危うく夢見た一年』(ともに航思社)、
『迫り来る革命』(岩波書店)、アラン・バディウ『ワーグナー論』、フレドリック・ジェイムソン『ヘーゲル変奏』(ともに青土社)、
ロバート・ブレナー『所有と進歩』(共訳、日本経済評論社)ほか多数。