『天皇制と闘うとはどういうことか』

【著者】菅 孝行

【判型】四六判、上製、スピン有
【頁数】346頁
【定価】本体3,200円+税
【コード】ISBN978-4-906738-37-3
【カバー・表紙写真】北島敬三「1988 東京」「1989 ニューヨーク」

 

真の民主主義のために

 

 

沖縄、改憲、安保法制、国旗・国歌……
なぜ政権批判のために、天皇の発言をテコにしなければならないのか。
護憲平和派が「おことば」に依拠するのはなぜなのか。
70年代半ばから天皇制論を発表し、「反天皇制運動連絡会」を設立した著者が、
中世下層民の文化からひもとき、敗戦後の占領政策問題、
安倍政権批判に至るこれまでの反天皇制論を総括、
あらたな戦線のための拠点を構築する。
欺瞞に満ちた戦後民主主義を脱却し、民衆主権の真の民主主義を根付かせるために。
(樋口陽一との対談、ダグラス・ラミスへのインタビューも収録)

 

【著者より】

反天皇制闘争が目的に到達するには
「物質的な力」に転化した観念の共有が不可欠だ。
「敵」は幻想の共同性、
すなわち国家の権威としての宗教的価値を内面化した
「国民」の観念である。
制度の除去には、それに先立つ観念の無力化が不可欠なのである。
それによって、きのうまで畏怖や憧憬や親愛の対象だと感じられた
権威の表徴に何も感じなくなり、
集合的な畏怖や憧憬や親愛を媒介とする観念の統合力が消滅する。
それを実現するのは権力のヘゲモニーと闘う対抗ヘゲモニー形成の運動、
「陣地」を形成する組織戦である。

——第Ⅰ部第3章より

 

 

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【目次】

第Ⅰ部 日本君主制の制度悪を問う

 第1章 天皇制と闘うとはどういうことか——制度悪の一掃のために
  Ⅰ 近代国民国家の統治形態としての天皇制 | Ⅱ 裕仁と明仁の差異 |
  Ⅲ 明仁天皇制のアポリア | Ⅳ 国家神道の呪縛 | Ⅴ 日本文化と天皇制 |
  Ⅵ 天皇制との闘いをどう構想するのか
 第2章 安倍政治・立憲主義・反天皇制——樋口陽一×菅孝行
 第3章 集合的幻想の起源と占領統治七十余年の欺瞞
     ——「改憲」に直面する2018年以後に向かって
  Ⅰ 政権の改憲志向と天皇の「護憲」 | Ⅱ 八・八が露呈させたもの |
  Ⅲ 詐術としての象徴天皇制の歴史的起源と現在 | Ⅳ 天皇幻想の基盤と虚構の起源 |
  Ⅴ 現代国家における天皇制と「主権者」の〈始末〉のつけ方

第Ⅱ部 生前退位と占領統治の陥穽

 第1章 何よりもダメな〈主権者【われら】〉
     ——政権の荒廃・生前退位・戦後統治七十四年の因果
 第2章 明仁「八・八メッセージ」から天皇制解体を考える

第Ⅲ部 戦後天皇制国家と沖縄

 第1章 安保・沖縄・天皇制に関する「本土」の歴史的責任
 第2章 沖縄と「本土」の間——天皇・安保・辺野古基地 ダグラス・ラミス インタビュー

第Ⅳ部 〈聖なる天皇幻想〉は何を生み出したか

 第1章 日本近代国家の宗教性をめぐって
  Ⅰ 近代の統治の幻想性とその射程 | Ⅱ 占領軍と天皇裕仁の合作 |
  Ⅲ 日本社会の差別と天皇 | Ⅳ 戦後(象徴)天皇制の延命と変質
 第2章 賤民文化の精神世界
  Ⅰ 日本文化と天皇 | Ⅱ 柳田國男と民衆文化 |
  Ⅲ 野垂れ死にと隣り合わせの〈幻想の解放区〉 | Ⅳ 賤民文化の歴史的原基 |
  Ⅴ 賤民の力——宗教と芸能をめぐって | Ⅵ 漂泊者の精神世界 |
  Ⅶ 新旧仏教と被差別 | Ⅷ 賤民文化の達成と展望

第Ⅴ部 統合切断に向かう〈組織戦〉

 〈組織戦論〉序説
  Ⅰ 「短い二〇世紀」の帰結 | Ⅱ アジールと根拠地 | Ⅲ 過去の遺産へ |
  Ⅳ 矛盾は力に変わり得るか | Ⅴ 関係の危機の長い道程 |
  Ⅵ 統一戦線と「工作者」 | Ⅶ アジール建設と組織戦

補足的論点 天皇制と日本資本主義のことなど——あとがきにかえて

 

【略歴】

菅 孝行(かん・たかゆき)
評論家、劇作家。1939年生まれ。
舞台芸術財団演劇人会議評議員、
ルネサンス研究所運営委員、河合文化教育研究所研究員。
著書に『戦う演劇人』(而立書房、2007年)、
『天皇制論集 天皇制問題と日本精神史』(御茶の水書房、2014年)、『三島由紀夫と天皇』(平凡社新書、2018年)、
編著に『佐野碩 人と思想』(藤原書店、2015年)など。