『コミュニズムの争異』

【著者】アルベルト・トスカーノ
【訳者】長原豊
【原題】The Communist Differend: Essays on Toni Negri and Alain Badiou

【判型】四六判、上製、スピン有り
【頁数】308頁
【定価】本体3,200円+税
【コード】ISBN978-4-906738-21-2
【カバー・表紙・本扉作品】荻野僚介《Gray on Gray × 3》《w970 × h1303 × d33》《w728 × h727 × d20》

 

来るべきコミュニズムへ

 

 

コミュニズムの思想的刷新、新たな革命派の理論的再興をめざして世界的に注目される若き俊英が、
みずからの2人の師であるネグリとバディウの理論を極限まで展開し、さらなる展望を開く──
ネグリとバディウの批判的入門書にして、
来るべきコミュニズムを構想する最前線のラディカル思想。

日本オリジナル編集・出版。

 

【書評・紹介】

『週刊読書人』2017年4月21日号、「傾向と分離――コミュニズムと哲学」松本潤一郎

 

【序文より】

本書に集録された論考は、ネグリとバディウ、この2人に共通の地平である
「コミュニズム」の意味そのものをめぐる「争異」という視点から、
実りあるものとして読解されることを望んでいる(…)。
これらの論考はすべて、ネグリとバディウから引き継いだ
「コミュニズムと哲学はともに思考されねばならない」という確信に衝き動かされて執筆されたが、
それぞれの論考は個別の探求にとどまってもおり、
一貫した方法論があるとすれば、その方法は、
肯定そのものではなく、これら二人の思想家の政治的(あるいはメタ政治的)な思想のいくつかの境位、
あるいは構成要素への内在的批判である。
本書が、日本の読者が今日におけるコミュニズムの哲学における問題点と展望を
みずから再構築するために役立つことを期待している。



 

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【目次】

序文 係争のもとにあるさまざまなコミュニズム

 

第Ⅰ部 ネグリ

第1章 叛乱のクロニクル──トロンティ、ネグリ、そして敵対関係の主体

第2章 つねにすでに、あるのはただ現在だけ──ネグリと生政治的なこと

第3章 マルチチュードの感覚的な宗教──ネグリにおける芸術と抽象化

 

第Ⅱ部 バディウ

第4章 国外に追放されたマルクス主義──アラン・バディウの転回

第5章 暴力は思考可能か──バディウと(マルクス主義)政治の可能性

第6章 ブルジョワとイスラム主義者、あるいは政治の他なる主体

第7章 前‐政治的時代の政治

 

訳者あとがき 「仲介者ドゥルーズ」と「消えゆく媒介者マルクス」のコミュニスト的結節は可能なのか?

 

【著者略歴】

アルベルト・トスカーノ(Alberto Toscano)
ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジ教員(批判理論)、同哲学・批判的思想研究センター共同ディレクター。
マルクス思想の理論的発展を進めるべく1997年に創刊されたHistorical Materialismの編集委員をつとめる。
著書に、The Theatre of Production: Philosophy and Individuation between Kant and Deleuze (Palgrave MacMillan, 2006)、Fanaticism: On the Uses of an Idea (Verso, 2010)のほか、共著としてThe Italian Difference: Between Nihilism and Biopolitics (re.press, 2009)、Cartographies of the Absolute (Zero Books, 2015)など。
バディウ『世紀』『さまざまな世界のさまざまな理論』、ネグリ『政治的デカルト』などの英訳も手がける。

【訳者略歴】

長原豊(ながはら・ゆたか) 法政大学経済学部教員。1952年生まれ。
著書に『ヤサグレたちの街頭』(航思社)、『天皇制国家と農民』(日本経済評論社)、『われら瑕疵ある者たち』(青土社)、
『政治経済学の政治哲学的復権』(編著、法政大学出版局)、『債務共和国の終焉』(共著、河出書房新社)など。
訳書にジジェク『2011 危うく夢見た一年』(航思社)、『迫り来る革命』(岩波書店)、
バディウ『ワグナー論』(青土社)、ブレナー『所有と進歩』(監訳、日本経済評論社)ほか多数。