【著者】布施哲【判型】四六判、上製、スピン有
【頁数】280頁
【定価】本体2,600円+税
【コード】ISBN978-4-906738-23-6

【カバー&帯図版】エドワード・ホッパー『ナイトホークス』

 

【ためし読み】

 

 

非時間性=「革命」の水脈

シュンペーター、シュトラウス、ラクラウ――
「イノベーション」や「アントレプレナー」、
新保守主義と政治哲学、
そしてラディカル・デモクラシーで知られる
一見相容れない3人の思想を
根源的に捉えぬいた果てに立ち現れる未知の相貌。

 

 

【著者より】

主人であろうが奴隷であろうが、資本家であろうが労働者であろうが、「人は皆」愚者としてただ在る。
パイを奪う速度と「生活術」の優劣を競い合う者たちの傍らで、
不気味な隣人がいまだに間延びした表情のまま日々に倦んでいる。
その「間延びした表情」が、しかし、不条理な過程を経て一気に硬直する瞬間がある。
それはまさにベンヤミンのいう「現在時」であり、
それまで円滑に動いていたかに見えた凡常の暦が停止、霧消して、
代わりに廃墟に放置されていたがらくたたちが動きだす瞬間でもある。
本書はその瞬間に惹かれ、とらわれ、あるいは実際に立ち会った
幾人かの思想家たち――シュンペーター、シュトラウス、ラクラウ――を中心に論じるものである。
未来へのいかなる種類の空約束をも信じることができなくなって久しいわれわれが、
暦の停止する「現在時」を横領せんとする醜悪な《王》に心奪われることがないよう願いつつ――。

――「第0章」より

 

【目次】

はじめに

第0章 台詞がなかったペルセースのために――序にかえて
 労働と時間 | いわゆる本源的例外について | 「人間」の時代とその廃棄物 | 時間外を考える――序の結び

第1部 シュンペーター 第Ⅰ章 シュンペーターの終末論
 売文の徒 | モノの函数 | 資本主義過程の停止、あるいは暦の終焉 | 機械仕掛けの“批判的理性”
第Ⅱ章 資本化と政治的威信
 現実的魔法 | 自動化の果て | ボナパルティズム | 無媒介性のイデオロギー
第Ⅲ章 新結合をめぐって――イノベーションとその主体に関するいくつかの考察
 虫が知らせるイノベーション | 新結合 | 政治的新結合 | 行為者という動因 | 「屑、ごみ、かす」

間奏 ラクラウ 第Ⅳ章 回帰する人民――ポピュリズムと民主主義の狭間で
 境界域と関係性 | 突出する媒介者 | 解放性としての「人民」 | 鳥のように自由な、あまりに自由な連帯

第2部 シュトラウス 第Ⅴ章 末人たちの共和主義――レオ・シュトラウスと“政治哲学”
 “リベラル”であることの現在 | シュトラウス=コジェーヴ論争 | 哲学の自由と近代 | 末人共和主義
第Ⅵ章 闘う聖人
 危険思想 | 世界の夜 | 斥ける力 | 回帰への道 | 《始まりの再生産》 | 《政治哲学》

 

【略歴】

布施哲(ふせ・さとし)
名古屋大学大学院人文学研究科准教授。
1964年生まれ。
慶應義塾大学法学部政治学科卒業、エセックス大学で博士号取得(政治哲学)。
主な著書に『希望の政治学――テロルか偽善か』(角川学芸出版)、
『フーコー研究』(共著、岩波書店)、
『現代思想と政治――資本主義・精神分析・哲学』(共著、平凡社)など。

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