『哲学者とその貧者たち』

【著者】ジャック・ランシエール
【訳者】松葉祥一・上尾真道・澤田哲生・箱田徹
【シリーズ】革命のアルケオロジー 8

【判型】四六判、上製、スピン有
【頁数】416頁
【定価】本体4,000円+税
【コード】ISBN978-4-906738-36-6
【カバー・帯イラスト】鈴木昌吉

 

政治/哲学ができるのは誰か

 

プラトンの哲人王、マルクスの革命論、
ブルデューの社会学(そしてサルトルの哲学)……
かれらの社会科学をつらぬく支配原理を白日のもとにさらし、
労働者=民衆を解放する、
世界の出発点としての「知性と感性の平等」へ。

 

【著者より】

『哲学者とその貧者たち』は1983年に初版が発行された。
年月を経ても本書の命題の有効性は増えも減りもしていない。
したがって時の隔たりを理由に、それらを擁護するつもりも、訂正するつもりもない。(…)

平等は、政府や社会が進むべき目標ではない。
平等を、不平等から出発して到達すべき目標とすることは、
距離を制度化することであり、
その距離は「削減」作業そのものによって際限なく再生産される。
不平等からスタートした人は、ゴール地点で必ず不平等と再会する。
平等から出発しなければならない。
それがなければいかなる知も伝達されず、
いかなる命令も実行されないという最低限の平等から出発して、
それを限りなく拡帳しようとしなければならない。
支配の根拠を認識することは、支配を覆すためでなければ力をもたない。
つねにすでに支配を覆し始めていなければならない。
支配を無視し、
それは正しくないと認める決意から始まっていなければならないのである。

――文庫版序文(2007)より

 

 

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【目次】

初版序文
文庫版序文

プラトンの嘘

 国家の序列
  五番目の人物 / 時間の問い / 饗宴の序列 / 模倣者、狩人、職人 / 
  職に就く資格――博打打ちとシラミとり / 作業場の哲学者 / 
  三つの金属――自然という嘘 / 二つの貨幣――権力の座にある共産主義 / 
  別の宴、別の嘘 / 職人の徳 / 正義の逆説 / 
  女性、禿頭の人びと、靴職人

 言説の序列
  一つの洞窟からもう一方の洞窟へ / 庶子の思考 / 哲学者の奴隷 / 
  おしゃべりな啞 / 妄想の序列 / 新しい障壁 / 
  劇場支配制 / 蝉の歌 / 仮象の分割 / 城壁の足下で

マルクスの労働

 靴職人と騎士
  靴職人の蜂起 / 聖ヨハネ祭の夜 / イデオローグ、靴職人、発明家

 プロレタリアの生産
  生産の序列 / 別の洞窟 / 労働の足場 / 学問の非‐場 / 
  労働と生産――急進ブルジョワ階級のひそかな魅力 / 
  プロレタリアの学校 / 遅れた労働者あるいは共産主義の逆説 / 
  ラップ人の地の共産主義者 / 偽の出口――階級と党 / 遍歴職人の天才

 かすめとられた革命
  絶対的ブルジョワ階級 / ブルジョワの裏切り / ルンペンの勝利 / 
  沼の華 / 俳優王と乞食王

 芸術のリスク
  馬乗りたちと俳優たち / 〈書物〉の義務 / 知られざる傑作 / 
  漂泊の科学 / 芸術家の遺言

哲学者と社会学者

 マルクス主義の地平
  生産の舞台装置 / 太陽と地平 / 生産のパラドクス

 哲学者の壁
  疲れた番人 / 党あるいは連続創造 / 弁証法の刻印 / 哲学者の窓 / 
  機械の前の労働者 / 絶対兵器 / サルトル的な王 / 哲学者と暴君 / 
  雪のなかの荷車 / 寄生の弁証法 / 染物屋のせがれ / 影なき王 / 
  キャンヴァス上の爆発 / 労働者なき世界?

 社会学王
  演奏家、指導者、染物屋 / 正しい臆見の学問 / はさみと鍋 / 
  靴職人たちの半可通 / 告発された告発者 / 
  クレタのエピメニデスとマルクス主義者のパルメニデス / 
  医者と患者たち / 諸実践の科学 / ピアニスト、農民たち、社会学者 / 
  下品な社会学者と上品な哲学者

 さらにお望みの方のために

 

【著者略歴】

ジャック・ランシエール(Jacques Rancière) パリ第8大学名誉教授(哲学、政治思想、美学)。1940年、アルジェ生まれ。
邦訳された著書に『平等の方法』『アルチュセールの教え』(ともに航思社)、
『不和あるいは了解なき了解』『民主主義への憎悪』(ともにインスクリプト)、
『無知な教師』『解放された観客』
『感性的なもののパルタージュ』(以上、法政大学出版局)、
『イメージの運命』(平凡社)、『言葉の肉』(せりか書房)、『マラルメ』(水声社)など。

【訳者略歴】

松葉祥一(まつば・しょういち) フランス哲学、現象学。1955年生まれ。
著書に『哲学的なものと政治的なもの――開かれた現象学のために』(青土社)、
訳書にJ.ランシエール『不和あるいは了解なき了解』
『民主主義への憎悪』(ともにインスクリプト)、
E.バリバール『ヨーロッパ市民とは誰か』(平凡社)など。

上尾真道(うえお・まさみち) 京都大学人文科学研究所研究員(フランス哲学、精神分析)。1979年生まれ。
著書に『ラカン 真理のパトス』(人文書院)、
共訳書にJ.ランシエール『平等の方法』(航思社)、
M.フーコー『悪をなし真実を言う』(河出書房新社)など。

澤田哲生(さわだ・てつお) 富山大学准教授(哲学、現象学)。1979年生まれ。
著書に『メルロ=ポンティと病理の現象学』(人文書院)、
共著に『メルロ=ポンティ読本』(法政大学出版局)、
『人文知のカレイドスコープ』(桂書房)など。

箱田徹(はこだ・てつ) 天理大学准教授(思想史、現代社会学)。1976年生まれ。
著書に『フーコーの闘争』(慶應義塾大学出版会)、
訳書にK.ロス『68年5月とその後』、
共訳書にJ.ランシエール『アルチュセールの教え』『平等の方法』(以上、航思社)など。